Portraits of Roses

横浜イングリッシュガーデン(YEG)のバラを中心に様々なバラを紹介します

ロサ・キネンシス・オールド・ブラッシュ Rosa chinensis Old Blush

ラブリー♡

横浜イングリッシュガーデン(YEG)には、前回紹介したバラ以外にも桜の木に絡めてあるバラがあります。

 

ロサ・キネンシス・オールド・ブラッシュ Rosa Chinensis Old Blush

1793年以前 中国

コウシンバラ Rosa Chinensis の一種。
コウシンバラ(庚申薔薇)とは、中国原産の四季咲きのバラです。
「庚申」というのは、60日に一度巡ってくる庚申の日のことで、繰り返し咲くことから名付けられたと言われています。
日本には、室町時代以前に渡来。『古今和歌集』や『源氏物語』に登場する薔薇(そうび)にあたるのが、コウシンバラではないかと考えられているそうです。

こちらに植っているのは、枝変わりで、つる性のオールド・ブラッシュです。
オールド・ブラッシュは、中国からヨーロッパへ伝えられ、四季咲きのバラの誕生に貢献しました。
初期に中国からヨーロッパにもたらされ、バラの進化に影響を与えた4つの品種「the Four Stud Chinas」の1つ。
イギリス人のパーソン氏が入手し広まったので、別名「Parson's Pink Chaina」と言います。 



なんともぜいたくな眺めですが、バラが絡められているのは、八重桜「妹背」。

花と葉の色味の取り合わせが、桜餅を連想させる。おいしそ〜


花びらが散る足元には薄紫色の芝桜が植え込まれています。
この色の取り合わせ! マカロンカラー? もちろん、狙ってるんでしょうね。
こういうところがYEGのステキなところ。憎いね〜

 

関東の桜はもう終わり。春が駆け抜けていきます。
ここ数日の暑さで、バラもどんどん咲き進んでいるみたい。
早咲きのバラだけでも紹介しきれないくらい写真を撮ってきたのに、これからYEGの早朝開園にも行きたいし、他のバラ園にも足を運ぶ予定なので、バラの写真ストックが続々と増えそうで焦ります。

YEGのバラは2200種類もあるから1年かけても撮りきれないし、紹介しきれないと思うので、地道に続ければいいのだけれど、やっぱり真夏や真冬にバラの記事を書く気分には、あまりなれないんですよね。
なので、頻繁にアップしてしまうという状況がしばらく続きそうです・・・

早咲きのバラを撮っているときは、大体のバラがまだつぼみ。うっかりすると他の花に紛れて気付かなかったり、木の上の方でひっそり咲いていて見過ごしたり。

「まだ、ポートレートを撮られていない人(バラ)は、声をかけてね〜」と心の内でつぶやきながら園内を回っていました。
ヤバい人・・・と思われるでしょうが、温室などで植物の写真を撮っている時、何か気配がして、振り返ると、さっきまで目に入らなかった葉っぱの影になっていた花がパッと目に飛び込んできたりするんですよ。あ、呼んでたのねって。

この写真を撮った日は、寄ったり、引いたり、アングルを変えて・・・と何枚もポートレートを撮る余裕もあったのですが、これからは大変! 一つのバラに2カットまで、とかにしないと撮りきれない!

野望としては、YEGのすべてのバラのポートレートを撮って、ビハインドストーリーをリサーチしたいのです。
誰にも頼まれてないけど、ライフワークかな。

ロサ・キネンシス・スポンタネア・イズエンシス

ミステリー・ローズ

こちらのバラは、YEGのインスタグラムの河合伸志氏のコメントによると、「趣味家として育種に取り組む入谷新一郎さんが伊豆半島の民家に生えているのを見付け、持ち帰った株です。いわゆるミステリー・ローズの1つです。」

とありました。
咲き進むにしたがって、花の雰囲気が違って見えます。
京劇に出てくる美人を思わせるような艶やかさ。

 

木に絡むようにして配されているんですが、その木というのが、こちら↓

桜なんですよ。ご無体な・・・という感じもしますが。

 

この桜もとってもきれいなんです。
紅豊(ベニユタカ)

 

桜の花が散った後は、さらにこんなことになっています。

ナニワイバラとダブル巻き。
豪奢ですが、桜の木は大丈夫なのかな? 

 

「ロサ・キネンシス・スポンタネア Rosa Chnensis Spontanea」 というバラは、1884年に中国で発見されたバラで、いっとき行方がわからなくなっていたのを、日本のプラントハンターの荻須樹徳氏が、1983年に再発見したのだそう。
色々な園芸種のバラの基本となっているコウシンバラの野生型・つる性種です。

こちらのミステリー・ローズもコウシンバラの系統に連なるということで、発見地の伊豆にちなんででしょう、「ロサ・キネンシス・スポンタネア・イズエンシス」と呼んでいるそうですが、どんないきさつで、伊豆半島の個人宅へたどり着いたのでしょうか?
ロマンをかき立てるバラですね。

マリー・キュリー Marie Curie IYC 2011

アーチに咲くマリー・キュリー(YEG)

このバラが、YEGにあるのは知っていたのですが、早咲きなのでタイミングを逃し、良い状態の花に出会えませんでした。
今年、ようやく撮影ができました。
ローズ&ペレニアルガーデンに出入りするアーチに配されています。

 

マリー・キュリー Marie Curie IYC 2011

2011年 日本
河合伸志 作出

 

バラの名前となった「キュリー夫人」の呼び名で知られる、マリー・キュリー(1867-1934)はノーベル賞を2度受賞(物理学賞1903年、化学賞1911年)した物理学者・化学者です。

ポーランドで生まれ育ち、フランスの大学で学び、研究者のピエール・キュリーと出会い、結婚。夫婦で放射線の研究に取り組みました。
その生活は楽なものではなく、研究のための設備や資金にも恵まれず、多くの苦労があったようです。
1906年には夫を交通事故で亡くすという不幸に見舞われますが、夫・ピエールの後を継いでパリ大学で初の女性教授となりました。
その後も女性差別やマスコミの誹謗中傷などを受けながらも、数々の業績を上げ、レントゲンの普及などにも努めました。

マリー・キュリーの名前を冠したバラは他にもあります。
フランス・メイランド社のオレンジ・ピンク系のバラ「Marie Curie」や、Jean-Marie Gaujard 作出の黄色いバラ「Madame Marie Curie」、アラン・メイランドによる、うっすらとピンク、クリームがかかる白バラ「White Marie Curie」。

それぞれ美しいバラですが、マリー・キュリーのイメージには毅然としたこの白バラが一番合うような気がします。

 

名前につく、IYC 2011 とは、Internarional Year of Chemistry の略号で、2011は年号。
マリー・キュリーのノーベル化学賞受賞から100年目、また国際純正・応用化学連合(IUPAC)設立100周年にあたることから" 世界化学年 " とされた年です。

 

作出者の河合伸志(かわい・たかし)氏は、横浜イングリッシュガーデンのスーパーバイザーとして、園内のディレクションをなさっています。また、バラの新品種の育種や庭園プランニング・デザイン、管理指導なども手がけておられます。

この河合氏作出のバラ「Marie Curie IYC 2011」という名前はマリー・キュリーのお孫さんにあたるエレーヌ・ランジュバン・ジョリオ博士がつけたものだそうです。

 

後ろ姿にも気品が漂う

 

こちらのエリア「ローズ&ペレニアルガーデン」は白バラを主役に、白花の宿根草や白斑入りの葉の植物などを組み合わせたホワイトガーデンといった趣になっています。

↑ 背景に見える花真っ盛りの木は、塀の向こう側の「ときめきガーデン」エリアに植えられているのですが、この時期は手前の庭と一体となって、ホワイト感を増量しています。

 

沸き立つように花が咲いて見えるこの木は、モクセイ科の「アメリカヒトツバタゴ」。
ナンジャモンジャノキと言われるヒトツバタゴと思っていましたが、別種なんだそう。
花の期間はそんなに長くありません。

この時期、YEGの園内は1日経ったら、もう前日とはすっかり様子が違うと言っていいくらい、花々が次々に盛りを迎え、移り変わっていきます。

エンジェル・フェイス Angel Face

バラの香りに包まれてベンチでゆったりと(YEG)

横浜イングリッシュガーデン(YEG)には6つのエリアがありますが、上の写真は「ローズ&ハーブガーデン」の一角。

このエリアには、香りの高いバラやハーブが合わせて植えられていて、特に早朝、ベンチに座っている時にサァーっと風がふくと、一気に爽やかな香りが押し寄せてきて、至福。
バラと取り合わせてある木々もライムカラーなど明るい色のものが多くて、庭全体が軽やかで爽快な印象です。

 

エンジェル・フェイス Angel Face

1968年 アメリカ
Swim & Weeks 作出

青味がかった濃いピンクのグラデーション、波打つ花びらがとても華やか。
香りはブルー系で爽やかです。
この花はモーブ色と称されることも多く、写真よりもっと紫がかって咲くこともあるようです。モーブとはフランス語のゼニアオイ(Malva)から来ている言葉。

ゼニアオイ↓

 

一輪、花びらの色が変わっているものがありました。

どういう仕組みでこうなるのかわからないけれど、何かの暗示めいているとロマンティックに考えてしまうのは、" 気持ちは乙女" おばさんの妄想でしょうか・・・?

 

*追加 上の写真を撮ってから一週間後、さらにこんなに華やかになっていました。

マイゴルト Maigold

4月初旬の横浜イングリッシュガーデン バラにはまだ早いけれど花いっぱい

横浜イングリッシュガーデン(YEG)

今まで首都圏で訪れたバラ園の中で、一番気に入っているのが、横浜イングリッシュガーデンです。

こちらは、広さはそんなにないけれど、バラの種類が多いのと、バラ以外の草花、樹木が充実していて、その取り合わせが本当に見事。
山野草やグラス類のセンスも良くて、じっくり見ていると一日いられる。
桜もさまざまな種類があって、実はお花見にも良いのです。

今年は年間パスポートを購入したので、頻繁に訪れたいと思っています。

 

では、早咲きのバラの一つ目。

マイゴルト Maigold

1953年 ドイツ
Reimer Kordes 作出

オレンジから温かみのある黄へ、ふんわりした花形がすてきです。
横浜イングリッシュガーデンではこんな風に木に絡めてあるバラがたくさんあります。

 

絡めてある木はクラブアップル・レモイネイ(姫りんご)。
花はこんな感じ↓ マイゴルトは早咲きなので、年によると思いますが、今年は両者の花がかぶる期間がありました。

 

マイゴルトの名前は、ドイツ語で「5月の金」という意味だと思います。
作出者のReimer Kordes は世界でも屈指のローズナーセリー「コルデス社」の3代目。
コルデス社はクリムゾン・グロリーやアイスバーグ、アンジェラなど日本でも人気の高いバラを作出しています。

 

赤味の強めなつぼみから、金色の蕊を持つ大ぶりの花が開く。

ふんわり、たっぷり。
黄色のバラって、「幸せ」な感じ。
シーズンの始まりを告げるバラです。

浜名湖花博2024で出会ったバラ5

マイカイ 撮影場所:浜名湖ガーデンパーク
マイカイ(玫瑰)Maikai

中国原産のバラ。
ハマナス(ロサ・ルゴサ Rosa rugosa)のハイブリッド。
原種同士の交雑種から八重咲が選ばれて、園芸種になったのではないかと考えられています。

 

中国では、ハマナスのことも玫瑰と呼び、バラ全般のことも玫瑰と呼ぶこともあるそうで、ややこしい。
中国ではつぼみをお茶にします。
血行促進、リラックス効果があるそう。

 

もう一つ、ルゴサ系のバラを紹介します。

フラウ・ダグマー・ハストラップ 撮影場所:浜名湖ガーデンパーク
フラウ・ダグマー・ハストラップ Frau Dagmar hastrup

1914年にデンマークのコペンハーゲン近郊のヴァンレーセにあったハストラップ・ナーサリーで、Knud Julianus Hastrup により発見されたバラ。

名前は、発見者の妻、Dagmar Henriette Vilhelmine にちなんでつけられたようです。

 

こちらはもうかなり咲き進んでいる様子なので、早咲きの中でも特に早く咲く品種なのかもしれません。
花は日持ちしなそうな印象。

 

原種に近いバラたち、香りがいいそうなんですが雨が降っていて、あまり感じられず。
マスクをして撮影していると、香りを嗅ぐのを忘れてしまうこともあって、後から残念に思うことも多いです。

きれいに開いた状態の花が撮れなかったので、いずれまたどこかでお会いしたら、写真を追加したいです。

 

これで、浜名湖花博2024で出会ったバラは終わりです。
次回からは、この春、横浜イングリッシュガーデンで出会ったバラたちを紹介します。

 

浜名湖花博2024で出会ったバラ4

ロサ・セリケア・プテラカンサ 撮影場所:浜名湖ガーデンパーク
ロサ・セリケア・プテラカンサ Rosa sericea pteracantha

ヒマラヤ、中国原産のバラ。
1890年頃に、フランスの宣教師ジャン・マリー・デラヴェ(Jean Marie Delavay)が発見し、その後、1900年にイギリスの植物学者・プラントハンターのアーネスト・ヘンリー・ウィルソン(Ernest Henry Wilson)によって発見された(らしい)。
別名は、ロサ・オメイエンシス・プテラカンサ(Rosa Omeiensis Pteracantha)とあるのですが、それぞれ別物のような表記もあり、よくわかりません。


セリケアというのは「絹のような」という意味らしく、オメイエンシスというのは、峨眉山(オーメイシャン)から。
中国語では Rosa Omeiensis f. Pteracantha を「扁刺峨眉薔薇」というようです。
f. が入っているから、ちょっと違う品種?
写真を見るとローズヒップの雰囲気が違う感じ・・・
でもまあ、ごく近い品種ということだと思います。(ざっくりですみません・・・)

 

それにしても、すごいトゲです。新芽で生えてくる時は、トゲが真っ赤で、光に透け、とても美しいので、そのトゲゆえにこのバラを愛でる方もおられるそう。

そして、普通、一重のバラは花びらが5枚のところ、このバラは花びらが4枚なのも特徴的です。

ローズヒップや新芽の赤いトゲも見てみたい。
いつかどこかで出会ったら、また写真を追加します。