薔薇の海 Bara no Umi

最高に美しい瞬間

横浜イングリッシュガーデン(YEG)が一年で最も華やかな時を迎えています。
この春、すでに何度か訪れたのですが、早朝開園にはまだ行けていません。
状態よく咲いているバラを撮るだけでも、2、3時間では全然足りなくて、焦っています。
この後、また行きたいのですが、風が強く吹いたり、雨になったりで気がかりです。

今回取り上げるのは、ローズ&ハーブガーデンに植栽されているミニバラです。

薔薇の海

日本 2008年
河合伸志 作出

YEGのディレクターをなさっておられる河合伸志氏が作られたバラ。
ミニバラで丈も低いけれど、青味を含んだ色合いがとても美しく、目を惹くバラです。
YEGの園内に咲くバラの中でも特に澄んだ青味を感じさせるバラだと思います。「海」と名付けたのも納得です。

 

昨年撮影したものの方が色味がよく出ていました。↓

さざ波が押し寄せてくるようですよね。
うっとり。早くまたあの庭に立って、バラとハーブの爽やかな香りに包まれたい・・・

ハトヤバラ Rosa Laevigata Rosea

この木、なんの木?

 

横浜イングリッシュガーデン(YEG)のローズ&シュラブガーデンエリアにある木。
一見、大きなピンクの花が枝垂れて咲く木に見えますが、木にバラが絡めてあります。

ハトヤバラ Rosa Laevigata Rosea

ナニワイバラの交配種、交雑種のハトヤバラ(鳩谷薔薇)。
埼玉県の鳩ヶ谷で栽培されていたので、ハトヤバラという名がつけられたと言われています。

 

元になったナニワイバラの花 ↓ (民家の生垣を撮影)

ナニワイバラ(浪速茨)
中国原産。日本へ渡来したのは江戸時代で、5代将軍綱吉・6代家宣の時代、宝永年間(1704-1711)で、大阪の植木屋によって広まったので、ナニワイバラと言われるようになったそうです。

生垣に一重の白い大ぶりの花が咲いていると、とても目立ちます。
ふあっふあっと蝶々がたくさん群がっているみたいな雰囲気。
モッコウバラと同じ頃に咲き、花期は短いです。5月頭頃までには花が散ってしまいます。
ちょっと見ないうちに生垣が緑になってしまうので、毎年、残念に思います。

 

バラが絡めてある木はマメ科のシダレエンジュ(枝垂槐)。

独特な枝ぶりが目を引きます。
昔、中国で見かけて何の木だろうとずっと思っていたのですが、大船フラワーセンターに植えてあるのを見て、名前を知りました。
中国では、出世につながる縁起の良い木とされています。

 

ハトヤバラには、濃色の種もあって、浜名湖ガーデンパークに植えられていました。
こちらは、ドイツのJ.C.Schmidt により1896年に作出されたものです。

浜名湖ガーデンパークのハトヤバラ



ニンバス Nimbus

Nimbus 雨を呼ぶ雲?
ニンバス Nimbus

イギリス 1989年
Bill Le Grice 作出

 

何色と言えばいいのか、なんともすてきな色あいです。
こちらは横浜イングリッシュガーデン(YEG)の「ローズ&グラスガーデン」に入ってすぐのところ、珍しい桜「須磨浦普賢象」の下あたりに植えられています。

 

YEGの桜「須磨浦普賢象」

この桜は、1990年に神戸市須磨浦公園内に植えられていた普賢象(花色はピンク)の枝がわりとして発見されたそうです。
写真は咲いてからまだ時間が経っていないので、黄色ですが、咲き進むにつれて、ピンク色が混じり、複雑な色合いになっていきます。

YEGでは、この桜の下あたりに、ニュアンスのある色合いのバラが数種類植えられており、桜とバラの共演が見られる、心にくい演出となっています。

 

Nimbusというのは、雨雲を意味するほか、聖像の頭部を囲む光背、光輪などを意味し、そこから転じて人のオーラなどにもいうそう。

 

花の中心部から広がっていく色のグラデーションが神秘的です。
作出者が命名の際に意図したのは、光背や光輪のイメージでしょうか?

 

ところで、「ニンバス」という言葉、聞き覚えがあるような・・・
ハリー・ポッターに出てくるホウキの名前じゃなかったかな? と後で調べたら、ハリーが最初にクイディッチの試合に使ったホウキの名前が「Nimbus2000」でした。
マクゴナガル副校長から授けられたホウキです。
こちらのネーミングは魔法の世界だから、「雨を呼ぶ雲」というのもかっこいいと思うけれど・・・

そういえば、戦国武将の武田信玄の愛馬の名は「黒雲」。
たいへんな暴れ馬で信玄以外に乗りこなせるものはいなかったというエピソードがある馬です。「黒雲」強そうで速そう。

「名付け」というのは、名付けたその瞬間から、名付けた対象との物語、歴史が始まるんですよね。
バラに名前をつけるって、とってもロマンチックに思えるのです。

 

コーヒー・ビーン Coffee Bean

Coffee Bean 小粋な奴ら

今回はアメリカ生まれのバラを紹介します。
横浜イングリッシュガーデン(YEG)で撮影。

 

コーヒー・ビーン Coffee Bean

アメリカ 2005年以前
Christian Bédard 作出

ウィークスローズ社のクリスチャン・ベダール氏作出のバラ。
ウィークスローズ社は、1938年にカルフォルニア州オンタリオでウィークス夫妻によって設立されたローズナーセリーで、1985年に創業者夫妻が引退した後、新たなパートナーに引き継がれ 、2012年以降はフランス系カナダ人のクリスチャン・ベダール氏が交配を担当しています。

 

ミニチュアローズ。小ぶりの赤褐色の花とツヤツヤした濃い色の葉っぱが名前の「コーヒー・ビーン」というイメージに合っていて、小粋な雰囲気があります。

バラの背景になるように銅葉のトキワマンサクを植え込んであるのがいいですね。
濃厚な色味の取り合わせが、コーヒーの香りとかコクを思わせます。

YEGの「ローズ&グラスガーデン」に植えられています。

ワーナー氏のハイブリット・ペルシカ

黄色い花のトンネル まだもう少し先

 

横浜の港のみえる丘公園に行ってきました。
バラは、まだつぼみのものがたくさんあるけれど、かなり賑やかになってきています。

 

奥側のアーチが連なっている部分には、グラハム・トーマスという黄色のバラが咲くのですが、まだ咲き始め。
盛りにはステキな黄色の花のトンネルになります。

手前の黄と赤のバラ↑ が今回、取り上げるハイブリッド・ペルシカですが、青いデルフィニュームが見事なので、もう一枚。

 

 

アイ・オブ・ザ・タイガー Eye of the Tiger

2006年 イギリス
クリス・ワーナー 作出

花の中央に入る、アイとかブロッチと呼ばれる模様が特徴的。
こうしたバラは、「ロサ・ペルシカ」というバラをもとに作られています。

「ロサ・ペルシカ」は、西アジアから中国西北部の乾燥地帯に自生する原種のバラ。写真で見ると、一重の黄色い花の中央にくっきりと赤い目模様があり、葉は青白く、普通のバラのように複葉ではなく、一枚ずつつきます。
「ロサ・ペルシカ」は、高温多湿の環境には適しませんが、交配・改良され、様々なハイブリット・ペルシカが誕生しました。

このピンクのバラもワーナー氏作出のハイブリット・ペルシカ。

アイズ・オン・ミー Eyes on Me

2002年 イギリス
クリス・ワーナー 作出

どちらも一重だけれど、インパクトがありますね。

ダーク・チェリー・パイ Dark Cherry Pie

ダーク・チェリー・パイ 食べちゃいたい!

バラの名前には、お酒やお菓子などおいしそうな名前がついているものが結構たくさんあります。

お酒なら、ワイン、ウィスキー、カクテル、シャンパン、ブランデー・・・
お菓子なら、キャンディ、キャラメル、チョコレートにケーキ、パイもあるんです。

 

ダーク・チェリー・パイ Dark Cherry Pie

2006年 イギリス
クリス・ワーナー 作出(Christopher H. Warner)

 

黒味がかったツヤツヤした葉っぱと渋い花色がシックでおしゃれ。
つぼみから開いてきたところ、本当にダークチェリーを連想させる。
背景の板塀もいい感じです。

涼しいところだと、より濃厚な色味になるそうです。
YEGでも秋だったら、もっと深い色合いが見られるかもしれません。

作出者のクリス・ワーナー氏は、イギリス・シュロップシャー州ニューポートに拠点を置き、様々なバラを生み出しました。
お得意な分野の一つは、つるバラ。

「ランブラーローズ」と呼ばれる、日本の野バラやテリハノイバラなどの原種を交配親とする、つるバラの品種や「パティオクライマー」という、従来のつるバラのように大きくなり過ぎず、四季咲き性に優れ、小さな庭でも気軽に楽しめるバラを作り、その一連の品種で、一躍、クリス・ワーナー氏の名が世界で知られるようになったそうです。

もう一つのお得意分野は、ハイブリット・ペルシカ。
ロサ・ペルシカの交配種です。花の中央に赤い目(アイ、ブロッチ)が入るバラ。
港のみえる丘公園で撮ってきたばかりの写真があるので、次回ご紹介します。

モッコウバラたち

モッコウバラとリージェン・ロード・クランバー

まだバラにほとんど興味がなかった頃、モッコウバラにだけは、好意を寄せ、憧れていました。

八重咲の柔らかい黄色のモッコウバラ。トゲがないというのが草っぽいし、これなら育ててもいいかなとさえ思いました。

しかし、上の写真でもわかるけれど、モッコウバラってとんでもなく、成育が旺盛なんですよね。それなりのスペースがないと難しそう。

YEGでは、このブログで最初に紹介したピンクのバラ、リージェン・ロード・クランバーと合わせていますが、ほとんど藪化している。

白いモッコウバラは、名札が見当たらなかったけれど、多分、白花八重のロサ・バンクシアエ・バンクシアエ

黄色もいいけど、白も清楚でいいですね。
YEGには他にもモッコウバラがあります。

 

ロサ・バンクシアエ・ノルマリス Rosa Banksiae Normalis

中国西部原産、モッコウバラの野生種と考えられているそうです。

 

滝のようにしだれて、やはり繁殖力がすごいですね。
細い葉が涼やかで、一重の花にも品があり、全体的に洗練された印象です。ただ、茎にはトゲがあるそう。

 

もう一種は、園芸種で、モッコウバラとミニチュアバラの掛け合わせ。

ピューレッツァ Purezza

1961年 イタリア
Quinto Mansuino 作出

こちらのバラは、黄モッコウバラの一重タイプとミニチュア種の「トム・サム」というバラを掛け合わせて作出されたもので、返り咲き性があり、トゲもないそう。
名前の「Purezza」はイタリア語で「純粋」。
クリーム色のつぼみと純白の花びらの対比も美しい。

ローズ&ペレニアルガーデンに配されています。

 

園内には、黄色の一重のモッコウバラ(ロサ・バンクシアエ・ルテスケンス)もあるそうなのですが、見損ねてしまった。

八重咲の方も園内では気づかず、売店のところにあったのを撮りました。

黄モッコウバラ、イタリアを思い出す・・・
まさに5年前の今日、ボルツァーノのホテルの窓から、2階くらいの高さからしだれるモッコウバラを眺めていたのでした。また見に行きたいな〜