Portraits of Roses

横浜イングリッシュガーデン(YEG)のバラを中心に様々なバラを紹介します

シーアネモネ Sea Anemone

イソギンチャク

 

「空蝉」「風花火」「桜貝」と紹介してきたので、もう一つ夏っぽい名前のバラを。

 

シーアネモネ Sea Anemone

オランダ 2018年
A.J.H van Doesum 作出

こちらのバラは、オランダ、ユトレヒトに近いハルメレンにある世界的な育種会社 Interplant Roses で作出されたバラです。
 Interplant Roses は、1962年に設立された家族経営の会社です。現在のCEO、Robert Ilsink氏は3代目、2020年から4代目も事業に加わったそうです。育種は50年以上の歴史があり、特に切り花用のバラでは定評があるそう。

 

このバラのお披露目には意外な事実がありました。
1990年にInterplant Roses の試験場で、珍しい形の花をつけた苗木が発見されました。
その苗木は、花びらの縁が波打つ独特な花姿をもっていました。
その花姿を定着させるのに、その後何年もかかり、さらに切花としての育種に時間をかけ、ようやく2015年に一つの苗木を選定。
人々からの好感触を得て、2018年に「シーアネモネ(イソギンチャクの意)」と名付け、京成バラ園芸を通して、世界に先駆けて、日本で発表されたのです。
そして見事、日本フラワー・オブ・ザ・イヤー最優秀賞 2018を獲得しています。

 

 Interplant Rosesはその後、このフリルを持つユニークな花姿のバラを展開し、#Ashtag Flowers という切り花シリーズとして売り出しました。

また、#Ashtag Flowers と同じように花びらが切れ込んでひらひらした花姿をもつ、ラッフルローズ(Raffle Rose)という庭用のバラも売り出しています。
こちらは、おそらく、シーアネモネを作出する過程でできたものではないかと思います。
2015年の国際バラとガーデニングショウに展示され、2015年秋から京成バラ園芸から売り出されたようです。

 

以前、 Interplant Rosesのホームページで見た時は、ラッフルローズ・シリーズは16種類ありましたが、現在は名前は残っているものの写真が出てきません。
もしかして、販売を終了してしまったのかな?
#Ashtag Flowers シリーズは現在10種類あります。

 

写真のシーアネモネは、横浜イングリッシュガーデンに、鉢植えで置かれていたものです。
ユニークな花姿だけど、この花を初めて写真で見たときは、日本人受けしなそう、というのが第一印象でした。

だから、世界に先駆けて日本で発表されたというのは意外に思ったのですが、考えてみると、日本人は「新しい物好き」だし、日本には、生け花文化もある。
華道やフラワーアレンジメントの世界では、常に新奇な花が求められているのかもしれません。

現在、シーアネモネは、京成バラ園芸のホームページには見当たりません。
販売は日本のみというバラですが、切り花用なので、どこかで生産されて流通しているのでしょうか?

 

ちょっとバラとは思えない花姿。
イソギンチャク、という例えは、うなずけます。

次回はシーアネモネ作出の過程で作られたのではないかと思われる、ラッフルローズ・シリーズのバラを取り上げます。