Portraits of Roses

横浜イングリッシュガーデン(YEG)のバラを中心に様々なバラを紹介します

キュリオシティ Curiosity

好奇心は猫をも殺す

 

葉っぱが斑入りのバラ第二弾。

 
キュリオシティ Curiosity

スコットランド 1971年
Alexander M. (Alec) Cocker 発見

 

前回の「ローザ・ヘルシューレン」は長い歴史を持つオランダの家族経営のナーセリーの創業者が作出したバラですが、こちらの「キュリオシティ」もスコットランドで長い歴史を持つナーセリーの一族の一人によって発見されたバラです。

アバディーンシャーのフレイザー城のヘッドガーデナーだったジェームズ・コッカーは、雇い主から安息日である日曜日に果物を摘むよう要請され、口論になり、仕事を辞めて、1841年にアバディーンで苗木園を開きました。

当初は、樹木や草花を販売して事業を拡大していきました。ジェームズの死後にはその息子のジェームズ(父と同名)が事業を継ぎました。
2代目のジェームズには、3人の息子(ウィリアム、ジェームズ(3代目)、アレクサンダー)がおり、息子たちも事業に加わり、1882年にJames Cocker & Sonsと社名を定め、1890年代には、バラの育種を始めました。

最終的に他の2兄弟が亡くなり、アレクサンダーが単独経営者となりましたが、1920年にアレクサンダーが亡くなった後、1923年に苗圃は閉鎖されました。
しかしアレクサンダーの息子のアレクサンダー(父と同名、通称アレック)が1936年に菊やポリアンサなどを育て始め、総合苗木園を再開。
その後、第二次世界大戦中に出会ったアン・レニーと結婚し、新しい苗木園を設立。郊外に広い土地を購入し、1960年代に事業をバラに特化することに決めました。
1976年には女王から王室御用達の称号を授与され、女王即位25周年を記念する「シルバージュビリー」を作出しました。

この創業者ジェームズのひ孫に当たる、アレクサンダー(アレック)によって、キュリオシティが発見されました。
キュリオシティは、クレオパトラというバラの枝変わりです。

 

アレックは、「シルバージュビリー」の成功を見ることなく、1977年に突然、心臓発作で亡くなり、事業を妻のアンが引き継ぎました。
アンは事業を拡大し、バラの育種家として80代になっても活躍していたそうです。
2002年には女王からアンに王室御用達の称号が授与されています。
そして現在は、初代の玄孫に当たるアレック・ジュニアがシニアパートナーとして妻のリアンと共に家業を引き継いでいます。
2018年には、皇太子(現国王)から王室御用達の称号を授与されました。

こちらの一族は男子の名前が、ジェームズとアレクサンダーだらけで、ややこしい。
ちなみに英国王室御用達は、企業だけでなく、個人にも与えられ、5年ごとに審査があって、更新が決まるそうです。

 

ところで、バラの名前の「キュリオシティ」とは「好奇心」のことですが、名付けの由来についてはよく分かりません。
葉っぱが斑入りというのが物珍しく、花びらの表が赤、裏が黄色という派手な色合いで「おや、なんだろう?」と人目を惹きつける、というような意味合いでしょうか?

↑ 葉っぱに白く丸く見えるのは、桜の花びらです。

 

「curiosity」を辞書で引くと、"Curiosity killed the cat"(好奇心は猫を殺す)ということわざが出てきました。

妙なことわざに思えますが、イギリスでは、"Cat has nine lives"( 猫に9生あり)
猫は9つの命を持っていると言われていて、そんな猫でも好奇心で命を落とすことがあるということから、「過度な詮索好きは災いの元となる」という意味だそうです。