つぼみが全開したら、まさに「夏の雪」。
サマー・スノー Summer Snow
アメリカ 1938年
Charles H. Perkins 発見
横浜イングリッシュガーデンの白バラを集めたエリア、ローズ&ペレニアルガーデンに植栽されているバラ。
このバラは、1936年にフランスのCoteau社によって育成された「つるサマー・スノー」の枝変わり品種です。
木立性の品種から枝変わりで、つる性の品種ができるのがよくあるパターンで、このバラのように、つる性品種からの枝変わりで、木立性品種ができるという流れは珍しいのだそう。
ホワイト・ガーデンというのは、確かイギリスのシシングハーストの庭から始まったのだったよな〜と検索していたら、この本が検索に上がってきました↓
菊池眞理 著 幻冬社 刊
『ホワイト・ガーデン誕生 ヴィタ・サックヴィル=ウェストの肖像』
古風な装幀なので、かなり昔の本かと思ったら、今年の6月に出たばかりでした。
早速、Amazonで注文して読んでみました。
シシングハーストの庭を作ったヴィタ・サックヴィル=ウェストの著作『あなたの愛する庭に』(1998年・婦人生活社)を読んだ時は「狭い庭」の基準が、お貴族様のぶっ飛び感覚で驚かされた箇所もありましたが、園芸においての失敗談を隠すことなく書いてあったり、独創的な発想やユーモアに引き込まれ、植物に注ぐ愛情や庭への情熱に共感しました。
でも本作中に書かれた彼女の恋愛関係や夫婦関係については、凡人感覚とはかけ離れていて、庭に関する彼女の文章からイメージする人物像となんだかうまく結びつきません。
結婚し、二児の母となってから、少女時代の女友達と駆け落ち。その後もヴァージニア・ウルフや数人の女性と恋愛関係になっている。
でも夫ハロルドとの夫婦関係は続けていて、別れる気もなかった・・・
本作で、著者は、ヴィタの心の内には満たされない思いがあったろうと書いています。
詩や小説などの創作活動において、詩人として認知され、一般受けした作品があっても、いずれ時の中で自分の作品は風化していってしまうのではないかと怖れ、失望していた。
女性ゆえに生まれ育った愛着のある城を継承できなかった喪失感を抱いていた。
そうした、負の感情が、作庭によって癒され、解放されていったのではないか。
晩年に近づくにつれ、社交界とは距離をおき、庭に没頭していく。庭はヴィタの分身であり、そこでは、人からの批評を気にすることなく、自分らしく生きることができた。
ホワイトガーデン誕生の考察については、興味深い記述がありました。
シシングハーストでは、食堂が母屋と別の場所にあって、食事をするためには庭を通り抜けて移動しなければならなかった。またヴィタは夕刻の散歩を好んだので、そうした時に、夕闇の中で、白い花々が空間に浮かぶ幻想的な風景を目にしてインスピレーションを得たのではないか。
また、当時、フラワーアレンジメントが流行っていて、その先駆者であるコンスタンス・スプライは白と銀葉の組み合わせを特に好み、著作にも白い花の花壇に植える植物のリストを載せていた。そうしたフラワーアレンジメントの世界に触れたことも「ホワイト・ガーデン」のアイディアの種となったかもしれない。
確かに夕闇の中で白い花が浮かび上がる情景には、心動かされるものがありますね。
夕刻、自分が選び、育てた白い花々が咲き乱れる庭の中に一人佇む、白く浮かんだ花々が闇に紛れていく、それにつれて花の香りがより強く感じられてくる・・・
YEGのホワイトガーデン「ローズ&ペレニアルガーデン」が夕闇に紛れていく情景もきっと、すばらしいでしょうね〜
「夜の動物園」「ナイトミュージアム」とかあるけれど、「夕闇のローズガーデン」やって欲しいな〜
とはいえ、ライトアップは興醒めだし、人がたくさんいたら、ひたれませんね。
ヴィタの場合、ホワイトガーデンは「自分の庭」だから、そこに立った時の充足感は本当に深いものだったでしょうね。
YEG ローズ&ペレニアルガーデン