Portraits of Roses

横浜イングリッシュガーデン(YEG)のバラを中心に様々なバラを紹介します

アブラカダブラ Abracadabra

呪文を唱える

 

「アブラカダブラ」は、手品の時に呪文として使われたりする言葉ですが、語源には諸説あって、はっきりしないそうです。

子供の頃にこの呪文を聞いた覚えがあるけれど、近頃は全く聞かないし、すっかり忘れていました。

ハリポタファンなら色々な呪文を知っているかも知れないけれど、呪文と言って思い浮かぶのは「テクマクマヤコン」くらいかな・・・昭和のアニメ『秘密のアッコちゃん』でアッコちゃんがコンパクトを開いて変身する時に使っていた呪文。(お歳がバレる)

 
アブラカダブラ Abracadabra

ドイツ 2001年以前
W.Kordes & Sons 

このバラは横浜イングリッシュガーデン(YEG)の「ローズ&クレマチスガーデン」に植えられています。
このエリアにはワインレッドやパープル、ダークマルーンといった濃い色のバラが集められていて、重厚な感じがします。
バラと取り合わせてある植物も銅葉のものが多いのですが、上の写真のバラの背景に見えている木もよく見ると黒味がかった赤い花が咲いています。

 

クロバナロウバイ(黒花蝋梅)

地味派手というのか、渋い色だけど華やかさがある。
YEGがすてきなのは、こんな風に木にも凝っているところ。
バラに目を奪われてしまって、他の植物に気づかずに通り過ぎがちだけれど、じっくり見ると本当に色々な植物が植えられているのがわかります。

着生欄とか釣り忍なんかも仕込んであるし、バラ同志の組み合わせも「ホットチョコレート」と「ショコラティエ」が隣り合わせに植っていたり、大人っぽい赤バラの根元にかわいい赤い実をつける蛇苺が植っていたりする。

植栽をデザインしている人の遊び心、企みを見つけるのが楽しい。

 

先日、YEGで帰りのシャトルバスを待っている時に、近くに並んでいた人が、「思っていたより狭いわね。1回で十分、2度目はないわね。」「そうだね、京成バラ園の方がずっと見やすいよ」と話しているのが聞こえてきました。


京成バラ園も見事ではあるけど、バラの標本園って感じで、バラだけ。
最初はお〜っ!て思うんだけど、じきに飽きてしまう・・・

前に聞いた話で曖昧だけど、イギリスで「良い庭」とされる庭の定義の一つに、「その庭に一人で居て、誰と会話することもなく1時間居ても飽きない」というのがあったように思います。
YEGだったら、1時間なんてあっという間。実際早朝開園に行って、夕方5時まで居たこともあります。
ただ、バラの最盛期はものすごい人混みなので、YEGの本当の良さを味わうのは難しいかも知れません。
人が少ない時に園内に巡らされた小道を歩いていると、周りの木々に囲まれて、まるで秘密の花園を行くよう。
庭と対話できるというのか、没入できる。
あちらにもこちらにも企みがある。季節が違えば、また新たな発見がある。
YEGは知性が感じられる庭なんです。

庭の楽しみ方なんて人それぞれだから、とやかく言うこともないのだけれど、さ〜っと景観だけ見て、自分とバラを写真に収めて帰ってしまうのは、もったいない気がするんだけどな・・・